末永ブログ

【経営者の共通の悩み…】変化の激しい時代を乗り越える”報連相”強化術
2025年10月20日

最近、多くの経営者の方々と対話する中で、驚くほどよく議題にあがる”共通のテーマ”があります。
それは、「報告・連絡・相談(報連相)」の重要性です。
お客様の業種は異なっても、共通の課題意識を抱えているのは、なぜなのでしょうか?
それは、昨今の経営環境の激しい変化に対応するために、社内を改革するうえで、「報連相」をますます活発にする必要性があるからでしょう。
お客様からの品質要求が高まる一方、社内では人材育成の難しさ、労働時間の制約、休日増加、コンプライアンス対応といった”多様な要素”が絡み合い、仕事を取り巻く背景はかつてなく複雑になっています。
「経営層」と「幹部管理者」間の報連相の実態とは?
特に喫緊の課題となっているのが、「経営層」と「幹部管理者」間の報連相です。
共に経営を推進する両者にとって、報告・連絡・相談は経営の根幹をなすものです。しかし実態として、重要な報告事項であっても着手が遅れがちになる事がよく見受けられます。なぜ、そういったことが起きるのでしょうか?
不十分な報連相の背景には、以下のような”報告者側の内面的な抵抗”があるようです。
●「事実がもう少し明確になってから報告しよう」
●「まだ初期段階で対応中だから」
●「以前、中途半端に報告して注意されたから」
●「報告すると、自分のマネジメント能力の無さを指摘されるかもしれない」
こうした理由は、往々にして報告する側(ここでいう幹部管理者)の視点に偏りがちです。つまり、経営者の多忙さ、厳しい表情、あるいは話す機会の減少といった、表面的な状況に意識が向きすぎているのかもしれません。
そうすると、肝心の「経営的な判断の最適化」という視点が抜け落ちていってしまいます。
幹部管理者が、現在の経営環境を正面から受け止めて、そして「もう一歩踏み込んだ」行動をとることを経営者は期待しているのですが、それがなかなか実現しない現状があるのです。
”経営判断のズレ”を未然に防ぐ方法
では、ここで改めて「何のための報連相なのか」を深く考えていきます。
報連相の根本的な目的は、「経営的な判断のズレを未然に防ぐこと」にあります。それぞれの立場でそれぞれの”正しさ”はあると思いますが、「経営全体から考えて行うべき”正しい判断”」は限られます。
その判断のためには、情報を共有する必要があります。
つまり、最適な判断を下すためには、必要な情報が適切に共有され、それに基づいて意思決定がなされることが不可欠なのです。

社外の視点から見れば、その会社が行う判断は一つです。もし、同じ会社でありながら担当者によって異なる判断が示されれば、取引先や顧客は戸惑い、企業への信頼を損ないかねません。
社外に対して発信する情報について、担当者はまさしく「会社の代表者」と見なされます。そのため、社外に情報が発信される前に、社内で十分な議論が尽くされ、経営判断として統一されていることが大前提なのです。
歴史を紐解けば、「部下から何度も報告が上がってきても、それが組織の正しい意思決定に繋がらなかった悲劇的な事例」が多々あります。
戦時中の旧日本陸軍の教訓は、「失敗の本質」を読めば明らかです。私たちはこの過去の失敗から、深く学んだはずです。

同じ過ちを繰り返さないためには、まず報連相について、経営層と幹部が率直に、そして建設的に語り合うことが出発点となります。そして、経営層と幹部間の報連相の質は、社内のモチベーションや会社への信頼に直結します。
社員は理屈抜きに、肌感覚で「上層部間のコミュニケーション状況」を察知しているものです。この課題に真摯に向き合い、報連相の”質”を高めることこそが、急速に変化する時代を勝ち抜くための経営の要諦となるでしょう。