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転職はゴールじゃない。入社後の壁を乗り越えるためのオススメ本【3選】

転職はゴールじゃない。入社後の壁を乗り越えるためのオススメ本【3選】

転職はもはや”特別な選択”ではない

「転職」という、人生における一大決心。
かつては「終身雇用」という言葉に象徴されるように、一つの会社に勤め続けることが一般的でしが、現代社会では、転職はキャリアを形成する上でごく自然な選択肢となっています。

2025年現在、労働市場全体で人手不足が深刻化しており、転職市場は高い水準を維持。ある調査によると、働いている正社員のおよそ14人に1人が1年以内に転職している計算になります。¹
そして、20-30代の若手層の転職だけでなく、近年では40-50代の転職も増加傾向にあり、「転職」はもはや特定の世代だけの選択肢ではなくなっています。

転職後の「理想と現実のギャップ」は 誰もが通る道

新たな環境への適応は、期待に満ちている一方で、「予期せぬ困難」を伴うものです。

・前職での成功体験が通用しない
・組織の文化に馴染めない
・自身の役割が不明確である

こんな声を皆さんも一度は周囲から聞いたことがあると思います。
転職者が直面する”普遍的なギャップ”….つまりこれらの”悩み”は、特別なものではありません。

きっと、この”9月”に転職して数週間経った今、「この選択は本当に正しかったんだろうか?」という漠然とした不安や、「なぜうまくいかないんだ…」という焦燥感に襲われている人も少なくないと思います。

慣れない人間関係、暗黙のルール、誰も教えてくれない仕事の進め方・・・

右も左もわからず、手探りで真っ暗な道を歩いているような感覚に陥り、自分自身を見失いそうになることもあるかもしれません。

調査では、転職入社者の”半数以上”が、入社後に何らかのギャップを感じています。特に、「給与・待遇」「仕事内容」「人間関係」「社風・企業文化」といった項目で、多くの転職者が期待と現実の間にずれを感じているのです。²

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前職での「自分」というアイデンティティが通用しなくなり、新しい環境での「自分」を再構築しなければならないという、心理的な負荷でもあります。
私自身も、過去にキャリアチェンジを経験した際、この無力感を痛感しました。

しかし、この”入社後の壁”を乗り越えるためには、単なる業務スキルの習得だけでは不十分なのです。

むしろ、「働くことの本質的な意味」や「いかなる環境でも揺るがない自分自身の軸」といった、より深い部分に根差した思考法です。
なぜなら、環境が変わるたびに学び直す必要があるものとは異なり、こうした普遍的な知恵は、私たちの転職後のキャリアを自律的に築くための「思考の羅針盤」となるからです。

今回ご紹介する3冊の本。きっと転職という「通過点」を、人生の「転換点」に変えるための、深い洞察と哲学を与えてくれるはずです。

1. 「7つの習慣」

著者:スティーブン・R・コビー/出版社:キングベアー出版

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新しい自分になるための「心のOS」をアップデートする

ある意味で…転職は、まるで新しいパソコンに買い替えるようなものだと思います。新しいOS(環境)に慣れるために、一生懸命努力します。しかし、ふと気づくと、古いソフト(前職のやり方)を使い続けてしまい、エラーを起こしていたりします、

転職者が陥りがちなのは、まさにこの「古いOS」を引きずってしまうことです。
「前職ではこのやり方でうまくいったのに…」
「この会社のやり方は非効率だ…」

そう感じた瞬間に、私たちの成長は止まってしまいます。なぜなら、常に外部の環境や他者を批判することに重点を置き、自分自身の内面と向き合うことを避けているからです。

この名著が説く「インサイド・アウト」という考え方は、まさに「心のOS」を根本から入れ替えるためのものです。つまり、他者や環境を変えようとするのではなく、まず自分自身の考え方を変えることから始めるのです。

リクナビNEXTの調査でも、転職理由の上位に「会社の将来性が不安」「給与に不満」が挙がります。しかし、転職後にも「変わらずに同じような不満」を抱えている人は少なくありません。³

この悪循環を断ち切るには、自分自身の行動様式や考え方を変える必要があります。新しいチームでプロジェクトがうまく進まないとき、「チームの連携が悪い」と他責にするのではなく、「どうすればチームを巻き込めるか」と自分の行動に焦点を当てる。この思考の転換こそが、新しい環境で信頼を築き、新たな可能性を開く鍵となります。

2. 「夜と霧」

著者:V・E・フランクル/出版社:みすず書房

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人生の意味は「会社」ではなく「自分」の中にある

転職は、自分が何者かを再定義する旅のようなものでもあります。
そのため、新しい会社で思うように活躍できず、自分の存在価値を見失いそうになったとき、「自分はもう必要とされていないのではないか」という無力感に苛まれることがあります。特に、前職で輝かしい実績を残した人ほど、この挫折は深く心に刺さるものです。

本書では、ナチスの強制収容所という地獄のような状況を生き抜いた精神科医フランクルが、「人間はどんな状況でも生きる意味を見出すことができる」と希望をもって私たちに語りかけてくれます。
この人間がどんな状況下でも生き抜く力を、「意味への意志」という概念で説明しています。

フランクルによれば、私たちは、自らが置かれた状況を自らの意思で「意味づける」ことができます。

「生きる意味は、会社や仕事から与えられるものではない」と。

例えば、任された仕事が、期待していた華やかな仕事ではなく、誰にも評価されないような地味なルーティンワークの業務だったとき。その時、その仕事の「意味」を自ら創造することが大切なのです。

「この仕事が誰かにどのような価値をもたらすだろうか考えてみよう」
「自分自身の成長にどう繋がるか再考しよう」

そう考えることで、仕事は単なる作業ではなく、自分自身の「人生の目的*の一部へと昇華します。私たちの存在価値は、会社や役職が決めるものではないのです。
本書は、仕事の意義を、他者や環境から与えられるものとして捉えるのではなく、自律的に創造する大切さを教えてくれます。

▶NHK「100分 de 名著」ブックスの『夜と霧』もおすすめです

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3. 『たゆたえども沈まず』

著者:原田マハ/出版社:幻冬舎

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自己の価値を再定義する「信念」の力

「たゆたえども沈まず」とは、パリ市の紋章の標語であるラテン語「Fluctuat nec mergitur」の日本語訳で、「揺れはするが、決して沈まない」という意味です。
どんなに厳しい状況に置かれても、揺れながらも決して屈しない強い精神力を表していて、幾度もの戦乱や革命を経てきたパリの歴史に重ねた言葉です。
本書は、画商の林忠正とゴッホの交流を描いた小説ですが、まさに転職後に読んで欲しい内容です。

転職は、自身の市場価値を再確認する機会である一方で、前職での実績や成功が通用しないという「現実と向き合う旅」でもあります。これにより、自己評価が低下し、自信を喪失するリスクを伴います。

本書は、生前は正当な評価を得られなかった画家、ゴッホの生涯が出てきます。彼の作品は、当時の美術界では異端とされ、貧困と精神的な苦悩に苛まれました。しかし、彼は自身の”信念”に従い、ただひたすらに描き続けたのです。

この物語が示す「外部からの評価が低くても、自身の努力と信念の価値は決して揺るがない」ということ。

転職後の試行錯誤や失敗は、無価値なものではありません。それは、新たな環境に適応しようと試みた証であり、未来の成長に向けた不可欠な投資です。
短期間での成果を求めるのではなく、長期的な視点から自身の価値を再定義する「信念」の重要性を教えてくれます。

ここまでご覧いただきありがとうございます。

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【引用】
¹マイナビキャリアリサーチLab 転職動向調査2025年版 https://career-research.mynavi.jp/reserch/20250312_92959/
²パーソル総合研究所 転職入社者のオンボーディングと活躍に関する定量調査https://rc.persol-group.co.jp/research/activity/data/onboarding.html

³リクルート転職理由と退職理由のホンネランキングhttps://www.r-agent.com/tenlog/ten-reason.html