末永ブログ
なぜ今、管理職が追い詰められるのか?AI時代の“見えない重圧”の正体
2026年2月25日

「今、”中間管理職”という存在そのものが、企業の中で危機に面している。」
こうした声が、2025年海外のHR業界で急に大きくなりました。
その背景には、AI導入の急進化やリモートワークの定着など、「時代の変化の波」が一気に”管理職”に打ち寄せた、という実態があります。
なぜ、こんなにも管理職にシワ寄せがいっているのか?詳しく解説していきます。
今回は、海外の主要調査やメディアの報道をもとに、
◎なぜ今、管理職がこれほど限界に達しているのか
◎企業はどのような対策を取り入れているのか
◎これから管理職には、どのスキルが求められるのか
これらの3つの視点で解説していきます。
中間管理職の8割以上が「燃え尽き」を感じている
→これは経営層や一般社員を大幅に上回る、全役職でワースト1位の数値
”追い詰められた管理職”の問題は、企業の規模や海外国内問わず、あらゆるところで実際に散見されています。
中小企業の管理者にも同様の傾向が多々見受けられます。海外事例や考え方をヒントにして、「自分事」として受け止める段階にきています。
まず、現時点で「管理職がどのくらい苦しい状況にいるのか」を確認していきます。2025年に公開された主要な調査データは、その深刻さを裏付けています。

▶「75%」の管理職が「過負荷」を感じている(Gartner 2025)
HRリーダーの75%が「自社の管理職は、責任の拡大によって圧倒されている」と回答。さらに74%が「管理職に変化をリードする準備は十分ではない」と危機感を示しています。
▶「82%」の中間管理職が「燃え尽き」を感じている(Forbes)
経営層(37%)や一般社員(40%)と比べると、中間管理職の数値は断然高い。つまり、「最も消耗されている層」は中間管理職であるという実態です。
▶「36%」 の管理職が「十分な支援を受けていない」と感じている(Deloitte 2025)
対人管理という仕事の中核であるにもかかわらず、組織側からの技術的・制度的サポートが不足しているという実態が浮かび上がっています。
管理職を追い詰める”背景”にあるものとは?
海外のメディアでは、この背景にある原因を「3つの重圧」として語っています。

その一つ目は、AIの導入による「現場監督」としての責任の増大です。経営層がAIを導入した後、それを実際の業務フローに落とし込む役割は、もっぱら管理職の肩に乗っている。さらに、部下のスキルを再開発させる義務も含まれます。
二つ目は、ハイブリッドワーク(出社とリモートの両立)による「調整役」としての負担です。「出社か、リモートか」という対立の最前線に立ち、顔の見えない部下のメンタルケアと生産性維持を同時に行う「感情労働」が急に増えました。
そして三つ目は、「チームメンバーのメンタルヘルスの管理者」としての期待です。2025年は「職場でのメンタルヘルス」が企業の倫理的責任とする流れが強まっており、管理職は、チームメンバーに対するカウンセラーに近い役割まで求められるようになっています。
つまり、「AIの導入」「ハイブリッドワーク」「メンタルヘルス対策」という3つの大きな変化が、すべて管理職という一点に集中している。これが、現在の「管理職の崩壊」の本質にある構造的問題です。
海外企業はどう対応しているか?「管理職再教育」の実態
この問題が深刻になりすぎた結果、海外では「管理職再教育」という取り組みが急に注目されるようになりました。英語では「Manager Enablement」と呼ばれるものです。
重要なのは、これが単なる「研修を実施する」という話ではないということです。「研修」という言葉ではなく「イネーブルメント」。
つまり、「成果を出す環境を整える」という表現が意図的に使われているのは、「現在の管理職の仕事の設計そのものが限界に達している」という認識があるためです。
「経済的損失」として語られている
海外のメディアでこの問題がどう報じられているのでしょうか?
経済・ビジネス誌では、「中間管理職の離職がもたらす組織への経済的損失」として取り上げ、年間数百万ドルの損失になっているとされています。人事・専門メディアでは、「今後の管理職の仕事はAIに任せ、人間はコーチングに特化すべき」という視点で報じられています。
またテック系のメディアでは、「AI時代に管理職が生き残る道は技術力ではなく共感力にある」と強調されています。
つまり、大手メディアの多数がこの問題を「企業の構造的欠陥」として取り上げているのが、現在の海外の動向の特徴です。
【事例】テルストラ(豪州・通信大手):「役割の分離」という解決策
オーストラリアの伝統を誇る通信・テクノロジーのリーディングカンパニーであるテルストラは、これまで一人の管理職が担っていた仕事を、「人を管理するリーダー」と「業務を管理するリーダー」の2つに分離する施策を導入しました。
キャリアやウェルビーイングの対応は前者に、プロジェクトや予算の管理は後者に。これにより、一人の管理職がかかる「認知負荷」を物理的に減らすことに成功しています。この事例は、「研修では解決できない構造的問題」には、「仕事の設計そのものを変える」アプローチが必要であることを示唆しています。

AI時代の管理職に必要な「5つのスキル」
では、これから管理職には具体的にどのような力が必要になるのでしょうか?
Gartner、Deloitte、MIT、LinkedInなどの主要な機関が提唱している「AI時代に管理職が身につけるべき5つのスキル」を整理しました。
これらのスキルに共通するのは、「AIが効率やデータ処理を担う中で、人間にしかできない部分をどう最大化するか」という視点です。

1. 共感力と心理的安全性の構築
AI時代に最も求められるスキルの筆頭です。具体的には、言葉の裏にある感情や不調のサインを察知できるようにする深層傾聴のトレーニングや、失敗を許容しやすいチーム文化を作るワークショップなどが取り入れられています。
2. AIの出力を「疑う」批判的思考力
AIが出した答えを無条件に信じるのではなく、「本当に正しいのか」を判断できる力です。AIにはバイアスや、もっともらしい嘘(ハルシネーション)が含まれるリスクがある以上、最終的には人間がその出力を精査する必要があります。AI生成の結果を意図的に疑い、倫理的・実務的な観点から修正していくシミュレーション訓練が提案されています。
3. 「走りながら修正する」戦略的柔軟性
「昨日の最適解」が「今日のAIアップデート」で変わる世界では、計画を固守し続けることは逆に組織を危険にさらすことさえあります。
短期間のサイクルでチームを動かし、フィードバックを反映していく、素早く機敏なリーダーシップが必要です。
さらに、企業内で陥りがちな「AI導入に対する現場の拒否反応」をどう和らげ、ポジティブな変化へと導くかのコミュニケーション設計も含まれます。
4. 「人間」と「AI」をどう組み合わせるか。業務再設計力
単に「AIを使えよ」と言うだけでは不十分です。
どの業務をAIに任せ、どの業務に人間が時間を使うべきかを具体的に指揮できる力が必要です。既存の業務を解体し、「AIが実行する部分」「人間が判断する部分」「二者が共に動く部分」の3つに再配置するフレームワークが提唱されています。あわせて、管理職自身がAIツールを使いこなし、部下への適切な指示方法を学ぶ実戦演習も推奨されています。
5. 倫理的責任と説明責任。「正しく使う力」
AIによる評価や判断が、意図せずにプライバシー侵害に結びつくリスクがある以上、経営と現場の間に立つ管理職は「倫理面の監督者」としての役割を担うことになります。
実際のトラブル事例に基づく法的・倫理的リスクの特定訓練や、AIを使った決定について「なぜこの結論に至ったか」を部下や顧客に説明できるようにする訓練が提案されています。
まとめ:自社に活かすためのポイント
ここまでの内容を踏まえると、自社に活かすためのポイントは以下の2つに絞られます。
① まず「現状を把握する」から始める
自社の管理職がどのくらい「過負荷」や「燃え尽き」を感じているのかを把握する。研修やツールの導入の前に、「問題の深さ」を確認することが最初の一歩です。
② 「5つのスキル」を自社の文脈に置き換える
共感力・批判的思考力・戦略的柔軟性・業務再設計力・倫理的責任の5つは、あくまでフレームです。自社の業種や現在のAI導入の段階に応じて、「今すぐ必要なスキル」と「中長期で育てるスキル」に優先順位をつけることが必要です。
この管理職の問題は、今後さらに深刻になることが予想されています。
今は「海外の動向」を目安にする段階かもしれませんが、いかに早く「自分の会社事」として受け止め、改善に動けるかが、組織の将来に大きく関わるポイントになるでしょう。
【出典】
Gartner(2025)/ Deloitte(2025)/ Forbes / Cariloop / The Wall Street Journal / HR Dive / SHRM / Lattice / Fast Company / Wired / MIT / LinkedIn
※ 本記事は海外の主要レポートやメディアの報道をもとに作成しました。一部の数値や表現は原文の解釈に基づいています。





