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なぜ学びが続かないのか?:若手・ミドル・ベテラン「世代別リスキリング」の現実

なぜ学びが続かないのか?:若手・ミドル・ベテラン「世代別リスキリング」の現実

1. なぜ今、「世代別の学び直し」を考える必要があるのか?

ここ数年、「リスキリング」「学び直し」という言葉を耳にする機会が一気に増えました。DX、生成AI….環境の変化が速くなるほど、「一度身につけたスキルで最後まで走り切る」という働き方は難しくなっています。

一方で、現場の声に耳を傾けると、こんな本音も聞こえてきます。

・若手:「学べと言われても、何から手を付ければいいのか分からない」
・ミドル:「学ばなきゃと思うけれど、時間も気力もほとんど残っていない」
・ベテラン:「今さら新しいことをやるより、これまでの経験を生かしたい」

総務省「社会生活基本調査」では、日本の社会人の1日の平均学習時間は10分未満とされています。
さらに多くの調査で指摘されているように、「学びの重要性は理解しているが、継続できていない…」と感じているビジネスパーソンが多数派であることが分かっています。
つまり、「学び直し」は意欲だけの問題ではなく、”環境と設計の問題”だということです。

そしてもう一つ大事なことは、若手/ミドル/ベテランで、抱えている現実がまったく違うという事実です。

同じ「リスキリング」という言葉でも、
20代の“これからどうするか”と、40代の“これからもやっていけるのか”、60代の“これまでの経験をどう生かすか”では、見ている風景も、感じている不安もまるで違います。
だからこそ、年代別のリアルを踏まえながら、それぞれに合った「学び直しの設計」を考えていくことが、経営や人事にとって重要なテーマになっています。

2. 若手・ミドル・ベテラン──同じ「学び」でも見えている世界は違う

同じ職場で働いていても、「学び」に関する空気感・認識は世代によってかなり違ってきます。

若手世代(20代〜30代前半)は、AIやYouTube、オンライン講座など、学びの選択肢が最も多い世代です。一方で、仕事に慣れるのに精一杯だったり、「どれが自分に必要な学びなのか」「今やるべきことが何なのか」が見えづらくなりがちです。

次に、ミドル世代(30代後半〜40代)は、プレイヤーとして成果を出しながら、マネジメントも担う“両方を求められる”状態になりやすい層です。また家庭やプライベートの責任も重くなり、「学ぶ時間は自分でひねり出すしかない」という現実に向き合っています。

そして、ベテラン世代(50代〜)は、長年培ってきた経験という大きな資産を持っています。しかし一方で、「今さら新しい考え方をゼロから学ぶのはかなり大変だ」「なんとかこれまでのやり方で最後まで走りたい」と感じる気持ちが芽生えやすい層でもあります。

「日本の社会人は世界的に見ても学習時間が少ない」とよく指摘されていますが、その背景には、こうした年代ごとの“事情”や“心の動き”があることを、まず認識しておきたいところです。

では、ここからは、世代ごとにもう少し踏みこんで見ていきます。

3. 【若手世代の学び直し】ー「何を学べばいいか分からない」不安との向き合い方

若手社員と話していると、よくこんな言葉を耳にします。

「学んだ方がいいのは分かっているんですけど、何から手をつければいいのか、正直よく分からなくて…」

学びの選択肢が多い世代ほど、「正解を外したくない」という不安も同時に抱えやすくなります。特に中小企業では、ジョブローテーションや明確なキャリアパスが整っていないことも多く、若手から見ると「この会社で、何をできるようになればいいのか?」が見えづらい状況になりがちです。

現場の声を聞くと、「学びたいが、何を学ぶべきか分からない」と答える20代は決して少なくありません。
つまり、決して意欲が低いわけではなく、“学びの方向性”が示されていないことが原因であるケースが多いのです。

▶では、企業・チームとして何ができるのでしょうか?

若手社員に対して有効なのは、「全部自分で決めて」と丸投げするのではなく、“学びの入口”を用意してあげることです。

●「この1年は、コミュニケーションと業務改善に一緒に取り組もう」と、会社として学ぶテーマを絞る

●社内でおすすめの書籍やオンライン講座をピックアップし、「まずはここから」を提示する

●学んだ内容を、“少しだけ話してみる”場をつくる

例えば、上記のこれだけでも、「この方向にがんばればいいのか」と感じることができますし、学びへのハードルがぐっと下がります。
若手社員の学び直しを支えるうえで大切なのは、「すごい自己啓発を期待する」のではなく、「最初の一歩を一緒に決める」ことだと言えます。

4. 【ミドル世代の学び直し】─時間と役割の板挟みをどう超えるか

30代後半〜40代のミドル層は、多くの中小企業で「要」となる世代です。
マネージャー、リーダー…役割の幅が一気に広がる一方で、プライベートでも責任が増える人が多く、1日はいつもフル回転状態。

そんなミドル世代に「もっと学びましょう!」と言っても、現場から返ってくるのは、こんな本音だったりします。

・「学ぶ時間が取れない」
・「やろうと思っても、緊急の仕事に押し流されてしまう」
・「新しいことを学んでいる余裕より、部下のフォローで手一杯」

実際、あらゆる調査で言われているように、「学ぶ意欲はあるが、時間と余裕がない」と答えるのは、ミドル層が多いとされています。

▶ミドル世代の学び直しには、“完璧を目指さない設計”が必要

ミドル層に求められる学びは、「ゼロから新しいスキルを身につける」ことだけではありません。
むしろ現実的なのは、以下のような「日常の仕事をよりよく進めるための学び」だったりします。

●既に持っている経験・知識を“言語化・体系化”する
●マネジメントやコミュニケーションの「型」をアップデートする
●部下の成長を支えるための“問いかけ方”や“任せ方”を学ぶ

そのためには、60分の研修を月に2回受けさせることも大事ですが、「15分の学び+現場で試す+次の週に振り返る」といった“小さなサイクル”を仕組みとして組み込むことこそ重要なのです。

たとえば企業側・チームリーダー側でできることとしては、

●チーム会議や1on1の中に、「最近試してみたこと」を共有する時間の導入
●1冊の本をリーダーだけが読むのではなく「章ごとに分担して要点を持ち寄る」読み方にする
●研修やセミナーに行った人に、「学んだことを3つだけ共有してもらう」時間をセットで用意して、実践を必ず行う

こうした“日常の中に溶け込む学び”に変えていくことが、ミドル世代の学び直しを支えるうえで非常に効果的です。

5. 【ベテラン世代の学び直し】─「これまで」と「これから」をつなぐ視点

ベテラン世代の方と話していると、若手やミドルとはまた違った、独特の感覚が伝わってきます。

「新しいツールを覚えるのは正直しんどいけれど、若い人の足を引っ張りたくはないんだよね」

「自分の経験が役に立つなら嬉しいけれど、どこまで口を出していいのか迷うことも増えた」

長年培ってきた経験や判断軸は、組織にとって大きな財産です。一方で、テクノロジーが急速に進化する中で、「自分のやり方は古いのではないか?」「アップデートしたいが付いていけない」という不安も抱えています。

ベテラン世代の学び直しにおいて大事なのは、若手と同じように“何か新しいことをゼロから覚えてもらう”ことだけではありません。

▶「経験×新しい視点」の掛け合わせが一番の武器になる

●生成AIや新しいツールを、すべて深く理解して使いこなしてもらう必要はない
●その代わり、「こういう場面で若手にAIを使ってもらうと良さそうだ」といった“活かし方の視点”を持ってもらう
●自分の経験を、若手の挑戦と組み合わせて「一緒に試してみる」スタンスを持ってもらう

例えば、こういった“視点の更新”こそが、ベテラン世代の学び直しの中心になります。

企業・チーム側としてできることは、ベテラン世代に「新しいツールの操作方法」を覚えてもらうことだけを求めるのではなく、「あなたの経験と、新しいやり方をどう掛け合わせるかを一緒に考えたい」というメッセージを明確に伝えることです。

そのうえで、以下のような「経験を活かしながら学び直す」導線を用意していくことが重要です。

●若手とペアで小さな改善プロジェクトを持ってもらう
●新しいツール導入時の“現場の懸念”を、拾ってきてもらう
●過去の失敗や成功のストーリーを、チームで共有する場をつくる

6. 【まとめ】─“特別な人材”ではなく、“普通の人の日常”から、学ぶ組織へ

若手・ミドル・ベテラン。
どの世代も、「学び直しの必要性」はどこかで感じています。しかし実際の現場では、それぞれが異なる事情を抱えています。

ここで大切なことは「学習離れ=意欲が低い」では決してないということです。多くの場合、“学びたい気持ち”と“学べる導線”がつながっていないだけです。

経営や人事ができることは、立派な研修プログラムを一度だけ導入することも大切ですが、それと同様に、

●会社として「この分野は一緒に学んでいきたい」という方針を示すこと
●書籍・動画・オンライン講座を、“個人ではなくチーム単位”で共有すること
●中小企業庁などの助成金・研修支援を上手に活用し、「コストを抑えながら続けられる仕組み」を整えること

こうした“小さな設計”の積み重ねが重要なのです。

”学習できている組織”は、特別な人材がいるから生まれるのではありません。普通の人が、普通の業務の中で、少しずつ学び続けられるように、経営が「学びを応援するメッセージ」と「続けやすい場」を用意しているだけです。

若手・ミドル・ベテラン。それぞれのリアルに合わせて、学び直しの設計を少しずつ整えていくこと。それが、変化の大きい時代に、企業がしなやかに生き残っていくための土台になっていきます。